鈴木のブログ

読書メモとして。

林望「謹訳源氏物語 七 改訂新修」

  林望「謹訳源氏物語改訂新修」の第7巻を読了。

 

  源氏物語は学生時代に与謝野晶子訳を途中まで読んで挫折していたものの、最近になってこの林氏の訳を書店で見つけて読んでみたところ、非常に読みやすく、どんどん読み進めることができた。つい先日7巻が発売されたので早速購入。

 

  7巻は柏木の密通後から紫の上の死去、主人公である源氏の退場までを描く。人生のはかなさをしみじみと感じさせつつ、相変わらず?主人公である源氏のクズ具合はなかなかにひどい。

 

  特に自分を裏切った女三の宮にささやきかけた、

誰が世にか種はまきしと人問はばいかが岩根の松はこたへむ

という歌はシビれる。

  また、紫の上死去後に女三の宮→明石の御方の順にわざわざ出かけて行って、「やっぱり紫の上の方がいい…」などと言っているが、そもそも女三の宮、明石の御方は紫の上の心に最もダメージを与えた筆頭なのではないだろうか?ほとんど正室のような地位にあった紫の上を差し置いて正室となった女三の宮と、紫の上不在時に源氏と懇意になり挙句(自分の子どもを持たない紫の上に)娘を育てさせることになった明石の御方。その二人のところに順に会いに行く源氏の振る舞いには改めてちょっとゾッとするものがある。

 

  とはいえ主人公の源氏がこれで退場し、次巻からは宇治十帖に移る。いよいよ物語も終盤、次の発売が楽しみである。

 

  ちなみに、物語の本筋とは関係なくふと気になったのが、源氏物語にあまり星についての記述が出てこない点(見落としているだけかもしれないが)。あれだけ自然に心動かされている平安貴族は、星には感動しなかったのだろうか。占星術があって、あくまで星は分析の対象であって自然として愛でる対象ではなかった、とか?