鈴木のブログ

読書メモとして。

金惺潤「不動産投資市場の研究―1992年から2011年の市場変遷と投資行動の二十年史」

タイトルのとおり、1992年から2011年にかけて、日本の不動産投資市場はどのように変わってきたか、様々な不動産流動化プレイヤーの動きを追いながら描く。600ページを超える大作である。 本書は80年代バブル後から、不動産流動化をキーワードに各プレイヤー…

片山善博・糸賀雅児「地方自治と図書館」

「市民の自立支援に向けて図書館や司書が果たすべき役割と可能性について、鳥取県知事・総務大臣を務めた地方自治の泰斗片山と、図書館政策論の第一人者糸賀が、地方自治、地域づくりの観点から縦横に論じ合う」本。 図書館の在り方については、最近では武雄…

曽我謙悟「日本の地方政府ー1700自治体の実態と課題」

新書という限られた分量の中で、複雑な「日本の地方政府」を非常に幅広い視野で語ることができている、タイトルに見合うだけの書籍であると感じた。 「日本の地方政府」という幅広なタイトルだが、これは大森彌・佐藤誠三郎編の「日本の地方政府」(1986年発…

木下誠也「公共調達解体新書」

本書では、我が国の公共調達制度の歴史が概観されている。以下簡単にまとめておく。 我が国の公共調達制度の出発点ともいえる明治会計法は、1889年に公布、1890年に施行された。 明治会計法は、私利非行による価格のつり上げを防止する観点から、西洋諸国の…

前田健太郎「市民を雇わない国家―日本が公務員の少ない国へと至った道」

「日本の公務員数はなぜ諸外国と比べて少ないのか」を分析した本。 そもそも日本の公務員数は諸外国と比べて少ないのか。 人事院によると、2013年度の日本の公務員数は339.3万人であり、人口の3%を占めめているに過ぎない。「公務員」の定義を最大限に広げ…

日高昭夫「基礎的自治体と町内会自治会―『行政協力制度』の歴史・現状・行方」

行政学の視点から、町内会自治会について分析した本。 「町内会自治会」は、全国のほとんどの地域に存在している。全国で、なぜ似たような(しかし実際の運用には様々なバリエーションがある)制度が形成されたのか。 近代的地方自治制度の出発点は、1888年…

デービッド・アトキンソン「新・観光立国論」

外国人観光客数の増加が著しい昨今、国から自治体まで、どこもかしこも「観光、観光」と言っているような気がするが、その観光政策について、日本がとるべき方策を述べた本。著者は元ゴールドマンサックスのアナリストで、データに基づく指摘は簡潔で説得力…

新川敏光「同心円でいこう 田中角栄」

「田中政治の軌跡を辿りながら、戦後民主主義を再考する」目的から書かれた一冊。エピソード豊富でかなりのボリュームがあるが、以下、目についた記述をメモ的に記載する。 まずは生い立ち。新潟で産まれた角栄は、家社会の価値観がしみ込んだひ弱な、神経質…

鈴木智彦「サカナとヤクザ」

「サカナとヤクザ」という直球のタイトルに魅かれて購入。 アワビやナマコ、ウナギといった水産物をめぐる密漁、密輸等々、「裏」の世界のルポは緊張感があって非常におもしろかった。 そもそも日本の漁業は、漁獲規制が緩すぎて資源管理ができていないため…

植田和男・内藤滋編著「公共施設等運営権」

最近いくつか実例がでてきた「公共施設等運営権(コンセッション)」について、その制度概要を概説した書籍。 「公共施設等運営権」とは、いわゆるPFIの一種であり、公共施設等の運営をノウハウを持つ専門会社・専門家に任せることにより、その人材や経験、…

山崎拓「YKK秘録」

「YKKは友情と打算の二重奏」。加藤の乱失敗後の小泉の言葉が、YKKというものの性格を簡潔に表しているように思う。 本書はYKKの一人である山崎拓が、YKKの誕生から終焉までを回顧したもの。 YKKの誕生は1991年。加藤紘一が山崎に「党のこと、国家のことを腹…

林望「謹訳源氏物語 七 改訂新修」

林望「謹訳源氏物語改訂新修」の第7巻を読了。 源氏物語は学生時代に与謝野晶子訳を途中まで読んで挫折していたものの、最近になってこの林氏の訳を書店で見つけて読んでみたところ、非常に読みやすく、どんどん読み進めることができた。つい先日7巻が発売…

饗庭伸「都市をたたむ―人口減少時代をデザインする都市計画―」

饗庭伸「都市をたたむ―人口減少時代をデザインする都市計画―」を読んだ。 先日読んだ「新築がお好きですか?」で参考文献として挙げられていた一冊。 本書は都市を「『豊かな生活をしたい』という目的に対する『手段』の集合体」と位置づけ、我々の目的のた…

砂原庸介「新築がお好きですか?―日本における住宅と政治」

砂原庸介著「新築がお好きですか?―日本における住宅と政治」を読んだ。 「『持家社会』は、日本においてなぜ形成されてきたのか。」と冒頭にあるとおり、「制度」面から日本の住宅事情(?)を明らかにするもの。 まちづくりを考えるためにも日本の住宅政策…